憲法改正と教育の課題と克服について活発に討議 教育研究大会


開会の挨拶をする全国教育問題協議会・中尾建三理事長

開会の挨拶をする全国教育問題協議会・中尾建三理事長

8月29日、一般社団法人・全国教育問題協議会(全教協) は東京・永田町の自由民主会館で「美しい日本人の心を取りもどす自主憲法の制定をめざして―現憲法のどこをどう改正すべきか―」をテーマに第35回教育研究大会を開き、憲法改正をめぐる日本の教育の課題や克服について活発に討議しました。

基調講演をする船田元 衆議院議員 (自民党憲法改正推進本部長)

基調講演をする船田元 衆議院議員 (自民党憲法改正推進本部長)

基調講演は船田元衆議院議員 (自民党憲法改正推進本部長)が「いまなぜ自主憲法制定なのか」をテーマに約1時間、憲法問題の総論から分かりやすく改正の必要性を解説し、熱弁を振るいました。

日本国憲法の成り立ちについてはGHQの押しつけ論と憲法古着論があり、これまで憲法解釈でしのいできた歴史を紹介。船田議員は歴代内閣で解釈改憲が先行してきたことについて「解釈改憲は信頼と安定を失う」と強調しました。

憲法改正は来年の参議院選挙後の2年以内に内容に関連する事項ごとに区分して行う短冊型で進め、「憲法改正発議は3~4回行う方法がふさわしい」とし、「衆参両議院で全議席の3分の2以上の賛成を得られる状況に整えて機が熟すよう、粛々と進めていく」と話しました。

第二部のパネルディスカッション

第二部のパネルディスカッション

第二部のパネルディスカッションでは、秋山昭八弁護士、岩野伸哉全日本教職員連盟委員長(日本教育文化研究所理事長)、高橋史朗明星大学教授、土屋正忠衆議院議員が出席し、コーディネーターには教育評論家(元参議院議員)の小林正氏 が登壇。

akiyama秋山昭八弁護士は2020年の東京五輪に向けて「テロを想定して緊急事態法の制定を憲法に盛り込むか特別法を策定するか急ぐべきである」と指摘。

岩野伸哉全日本教職員連盟委員長は18歳年齢の様々な問題点、とくに来年の参議院選挙については投票権が保障されましたが、その他の少年法の問題は不透明なままであると警鐘を鳴らしました。

iwano「今回、大阪府高槻で起こった陰惨な事件を見ても、親が親になりきれない事情があり、子供の命を守るために親となるべき大人の責任や家族、家庭の重要性を憲法に明記するのは当然ではないか」と述べ、「国づくりが人づくりであり、国家百年の大計あるならば、わが国の憲法は教育立国・日本の軸として高らかに明記してほしい」と要望しました。

高橋史朗明星大学教授は日本の武装解除、非軍事化にあるとする占領文書と憲法と教育基本法の男女平等規定について説明しました。スタンフォード大学フーバー研究所には憲法草案に関する文書が保存され、マッカーサー記念館で日本占領に関するシンポジウムが行われた時、憲法を作った民政局幹部が顔をそろえ、マッカーサーノートを修正した経緯を紹介。

戦後最大の解放は日本女性の解放にあるとし、ジェンダフリーの教祖的存在であるマーガレット・ミードの影響力を示唆。男女の区別が差別につながるとする男女差別撤廃条約などの考え方が浸透した経緯を説明しました。

takahashi「菊と刀」の著作のあるルーズ・ベネディクトが日本の伝統秩序と伝統精神を否定すれば日本人が戦意を失うとの戦略論文を書き、天皇制と家長制度の階層秩序を打破することで自由平等を根づかせる意図があったことも説明。憲法24条のできた経緯につながっていることを指摘しました。

親学議員連盟を立ち上げた時の勉強会で埼玉県から来た保育園長が「待機児童などいません。待機親がいるだけです」と開口一番答えたことを紹介。ゼロ歳児から保育園で預けたいと思っている親は一人もなく、子供のためにと主張しながら親優先の単なる経済政策に過ぎないので、働く親への有効支援策の見直しが必要であることを解説しました。

現状では専業主婦は全体で2割、6割が3歳児までは子育てに専念したいと思っていて、残り2割がキャリアウーマン。国の施策は働いている女性を中心に進められてきましたが、「親子が向き合う環境整備を整えなければ少子化は食い止めることができない」と述べました。

tsuchiya土屋正忠衆議院議員は「保育園の現場で抱きしめると緊張する園児が増えている」との現状を紹介。「保育士が産休・育児休暇を取った場合、このままでは自分の子供を保育園に預けて、自分の職場で他人の子供を保育すると給与が出るというのが現実」と指摘し、「経済界の一部が労働力不足を補うためと称して扶養控除をなくそうという動きがある」と述べました。

とくに女性が輝く社会の実現を目指す安倍政権でも「本当の働く必要のある人以外はある程度、子供が小さい時は親子の関係をしっかり築いていくことが社会の安定につながるとすれば、家庭・家族の団結になる」と指摘しました。スウェーデンでは生後18ヶ月間は保育園は乳幼児を受け入れないで育児休養手当を出している例を挙げ、日本も改善する余地があることを説明しました。

kobayashi討論で注目されたのは、自民党の改正案にある通り、憲法24条をめぐる家族、家庭をどう描くかという問題が一つの大きな柱であるということです。

コーディネーターの小林氏は「今後、少年法については深刻な議論をしなければならない。18歳年齢が選挙の投票権を確保したのは世界各国では徴兵その他の義務を負うという前提で権利が保障された経緯があるのに日本で単に権利だけが与えられている状況がいいのかどうか今後の法改正の検討課題だ」と締めくくりました。

 

【全国教育問題協議会教育研究大会  大会宣言】

一般社団法人・全国教育問題協議会は、本日ここに美しい日本人の心を取り戻すため、時代に合った憲法の制定をめざし、「現行憲法の何をどう改正したらよいか」をテーマに、第35回教育研究大会を開催し、多くの方々の英知を結集し、活発な討議を展開しました。

その結果、現行憲法を改正する理由として、国際情勢の変化、国家としての日本国、日本人に対する安全保障のあり方、緊急事態に対する国としての対応のあり方、地球環境の変化、憲法と教育基本法の一貫性など、現行憲法が制定されてから70年経った現代に合った憲法改正の必要性を痛感しました。

昨年以来、現実味を帯びてきた憲法改正の動きについて、九条の会をはじめ、反対する政党や団体は、現行憲法の改正は9条の改正、つまり、平和国家から軍国主義に転換するための憲法改正として異常ともいえる反対運動を展開しています。

この機にあたり、我々は特定のイデオロギーにとらわれず、手作りの憲法制定に向け、憲法改正に賛同する団体と共に協力し合って信念を持って取り組むことを誓い、大会宣言と致します。

平成27年8月29日 第35回全国教育問題協議会 教育研究大会